(説明)
最初に、学校は大人になるための通過儀礼だ、と書かれていますね。これも一つの定義でしょう。学校自体は古くからあって、それは効率的に文字学習を中心として文化を伝えることが目的だったけれども、限られた人を対象にしたものだった。しかし、近代社会になって、一般の人のレベルで学校を通した文化の伝達が行われるようになった。それまでは、親方の技を学ぶ、という徒弟方式。これまで何度もでてきているラピュタのパズーのイメージです。しかし、15世紀に印刷技術が進んでテキストを共有できるようになり、白紙に印刷されるように大量の子どもに知識を伝えることが可能になった。
いま、看護学校ではどのような形態で授業が行われていますか?一斉教授が主ですね。それは専門的な知識を、同一内容のことを、効率よく伝達したいからです。しかし、たとえば「脳死状態にある患者さんの家族に対するケアのあり方」、などが正解が一つとはいえないテーマを扱うとき、授業の形態を変えることもあるかもしれません。机が前を向いている、という形態は「あたり前」のことではない、というのが、僕が教育に関心をもった一つのきっかけでもあります。
技術の進歩によって知識の伝達方法が変わった、というのは面白いですね。果たして、本当に変わったのでしょうか。テレビがでてきた時代、インターネットがでてきた今、学校や教え方は換わらなければいけない、といわれますが、本当に「学び」がおきるのは、今も昔も変わらないかも、という見方もできます。
それは、さておき、「学校で学ぶ身体」というのは面白いですね。中学校の生徒指導を思い出してみてください。最初のほうは口うるさく言われますよね。そのうち、言われなくてもできなくなることが良いことだ、みたいな価値観が共有されはじめ、上級生は自分から動くようになります。これを、施設や空間という視点からみたとき、パノプティコンという興味深い装置が紹介されています。
<絵>
【見られずに見る】、囚人はいつも見られることで、監視の視点を内面化する、自分で自分を監視する主体を作り上げる。これって、中学校の生徒指導と似ていませんか?
話しが45ページまで飛びまして、近代学校の定着と不信の上から5行目に「しかし」という接続詞があります。この後に、特に言いたいことが来るんでしたね。どんなことが書かれているのでしょうか。1970年代の中頃から変わった、と書かれていますね。登校したくてもできない子どもを受け入れられるようにしよう、という流れから、登校はできるけれども学校には行きたくない、という流れになったと書いています。つまり、学校は価値がある、という社会の信念が揺らぎ始めた、ということです。「なぜ学校に行くのか」という問いに答えることが求められている、と締めくくられています。
要約
人類の歴史では、習俗のような形で子どもを大人にする仕組みが埋め込まれていた。
近代を迎えて学校が入り込んでくることで教えるー学ぶという文化伝達の方式の転換が進む。国民や産業人養成のための知識伝達、身体訓練という役割も学校は担った。
今日の問題は、学校という制度自体が、子どもの学びと合わない場合があることだ。
確認問題
1. 大人になるための通過儀礼という観点から学校の性格を整理してみよう。
それぞれの社会において、その社会に応じた基準により、正規の構成員として役割を果たしていけるものであると社会が認定するための通過儀礼が存在する。近代社会においては、学校がそれを提供する。(92字)
2. 学校方式の特徴を徒弟方式と比較して示してみよう。
徒弟方式では、教えるという意図を明確に持つことなく文化伝達が行われ、弟子達は親方と生活をともにして親方の技を学ぶ、もしくは盗む。その際、伝達されることには、親方の生き方全体に刻まれた人格も含まれる。学校方式の特徴は、教えるという意図を明確に持った行為が組織的に行われることであり、技術を効率よく伝えることに主眼が置かれ、印刷技術の進歩により同一内容を同時に伝達する一斉教授という形態が見られる。(197字)
3. 近代学校の成立を踏まえながら、その基本的な性格を示してみよう
近代学校は国家という新しい共同体の成立に伴い、その成員を育成するという役割を担い成立した。産業社会の発展に伴い、身体や精神の規律訓練が社会システムの中で要請され、学校にもその規律訓練装置の役割が求められてきた。近代学校の導入期においては、習俗など学校外での力量形成が行われていたが、近代学校は強制力を伴って子どもを学校に取り込もうとした。(169字)
4. 今日の学校改革の動向の基盤にある特徴についてまとめてみよう。
今日の学校改革の動向の基盤にある特徴として、情報化や脱工業化など、社会そのものの変化が影響し、近代学校そのものの根本的な見直しが挙げられる。それは、官・民という枠組みを越えて、幅広く、多様な形で繰り広げられている。(107字)
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