火曜日, 3月 04, 2014

ゆとり教育について

目的:ゆとり教育がどのような教育政策を指すのか、そうした教育政策がどのような経緯で成立したのか、どのような点が批判されているのかを理解した上で、自身の教育体験を振り返り、自身の教育観を再構成する。

導入:
「ゆとり」教育のイメージについて
「ゆとり」教育について知っていることを教えてください。→板書
 台形の面積の求め方を知っていますか。

1.ゆとり教育とはどのような教育であるか
「ゆとり教育」という言葉は教育行政的にはない 。小学校では1980-2010年度、中学校では1981-2011年度、高校では1982-2014年度(数学・理科は2013年度まで)まで施行される教育。主として1992年度から施行された新学力観 に基づく教育を指す。本来の理念は、詰め込み式の教育を改め、地域や家庭の中で人間力を高めていこうという教育政策。源流は戦後教育の改革議論が本格化した1980年代にある 。

例えば、少子高齢化が進むとどのような変化が生じる?
校内暴力はなぜ生じた?
なぜ詰め込み教育が批判された?

学習指導要領の変遷(志水2003,p.154)
第一次(1951) 教育の生活化(経験主義の問題解決学習)
第二次(1958) 教育の系統化(系統学習への転換、基礎学力の充実)
第三次(1968) 教育の科学化(科学的な概念と能力の育成)
第四次(1977) 教育の人間化(学校生活におけるゆとりと充実)
第五次(1989) 教育の個性化(新しい学力観にもとづく個性の重視)
第六次(1998) 教育の総合化(特色ある学校づくり、総合的な学習の時間)

「ゆとり」はいつから言われていた?
学習指導要領はどの程度の頻度で変わっている?
カリキュラム改革の振り子はどのように揺れる?

表 教育政策の流れに自分の年を書き込んでみよう
あなた 出来事
1987年 別世界 中曽根内閣 臨時教育審議会最終答申
1992年 「生活科」 が小学校低学年で導入、週5日制試行実施
1993年 0歳 中学校で家庭科の授業が男女必修、業者テスト廃止
1994年 1歳 高校で普通科・職業学科に総合学科 が加わる
1996年 3歳 中央教育審議会
2002年 9歳 「画一から個別へ」の現在の教育の本格実施
「生きる力」 、総合的な学習の時間、週5日制完全実施。
1月に「学びのすすめ」が発表される 。
2003年 10歳 学力低下論争 の根拠となるPISA結果
2005年 中山文科相が中央教育審議会に学習指導要領の見直しを指示
2006年 13歳 中学校 安部内閣(第一期) 教育再生会議
2007年 14歳 全国一斉学力調査実施 、政府の教育再生会議 がゆとり教育の見直しを提唱
2008年 学習指導要領の改正
2010年 学力上昇を示すPISA2009の結果が発表される。

2003年のPISAを受けた日本の15歳は、総合学習を何年勉強した?

2.ゆとり教育に対する批判
画一的主義を改める必要がある
「ゆとり教育」は学力格差・学習意欲格差を生む 。
基礎学力がついていない子どもには効果がない
(擁護派)始まったばかりで評価するのは時期尚早。/学力低下は錯覚。/PISAの順位の変動で大騒ぎすることが問題。

3.現在の学習指導要領
小学校は2011年度、中学校は2012年度、高校は2013年度から施行。授業日数及び算数・数学、理科、外国語の授業時間数増加。全体で3~6%、理数系で15%ほど増加 。

4.あなたの意見は?他の人の意見は?
あなたは学習意欲が高いと思いますか?問題解決力がついたと思いますか?
単純に授業時間を画一的に増やして詰め込み教育の時代に戻せばよいのか。
あなたの支持する教育は、どのような社会や国になることが目指されているのか 。

参考文献
苅谷剛彦,2001,『階層化に本と教育危機-不平等再生産から意欲格差社会へ』有信堂。
苅谷剛彦,2008,『教育再生の迷走』筑摩書房。
櫻井よしこ・宮川俊彦,2005,『ゆとり教育が日本を滅ぼす』ワック出版
志水宏吉,2003,「カリキュラムと学力-学力低下論からカリキュラムづくりへ」苅谷剛彦・志水宏吉編『学校臨床社会学-「教育問題」をどう考えるか』放送大学教育振興会,pp.152-169。
寺脇研,2007,「それでもゆとり教育は間違っていない」扶桑社。
ミニッツシート:①<ゆとり教育>に対する自分の体験と意見 ②<ゆとり教育>に対する他の人の体験と意見

注記
  1)1996年中央教育審議会答申「21世紀を展望したわが国の教育の在り方について」の中で、子ども、学校、社会全体に「ゆとりが重要だ」という言葉が使われ、メディアにより広まった。
  2)臨時教育審議会答申で提起され、1989年改定の学習指導要領に採用された学力観。旧来の学力観が知識や技能を中心にしていたのに対し、学習過程や変化への対応力の育成を重視することから、体験的な学習や問題解決能力の育成、関心・意欲・態度を重視する評価、指導から支援の教師役割の変化などが起こった。
  3)1984年9月首相直属の臨時教育審議会が設置され、1987年8月までに2000時間以上の会議、4度にわたる答申を提出した。その最終答申で、「少子高齢化」「国際化」「科学技術の高度化」「情報化」の4つのキーワードで未来予測し、それぞれに対応する教育体制への改革が提言された。
  4)平均寿命が60歳から80歳まで延びたことで生涯学習という概念が生まれる。また、一人の子どもが非常に恵まれた時代になる。
  5)1980年代に公立中学校で発生した生徒による暴力問題。81年から83年がピークで、毎年2千件あまりを記録し、そのうち9割が中学生によるものだった。
 6) 競争相手が多い時代は他人に勝つことが将来の幸福を保証するため、特訓が必要とされた。しかし、競争相手が少なくなることで、自分自身の関心によって学ぶ意欲が重視された。そこで、個々にあわせた教育や、教科を横断した総合的な学びが導入された。1970年代の中学校の総授業時間数は3535コマ、2007年には2940コマと約600コマ減っている。
  7)進歩主義や子ども中心主義、見えない教育方法などを「態度重視」の極とし、その反対に伝統的教育や見える教育方法などの「知識重視」の極を取ると、戦後改革(第一次)では「態度主義」に触れたが、高度経済成長期(第二、第三次)で「知識重視」に触れ、80年代以降の改革(第4,5,6次)で「態度重視」の極に触れている。次はどちらに触れるだろうか。
  8)小学校1,2年の理科と社会を廃止する代わりに新設された教科。「自分と社会とのかかわり」「自分と自然との関わり」などを考えさせる目的で、人々の接し方、公共物の利用、自然観察、生活技能などを学ぶ。
  9)1993年2月、旧文部省が全国の中学校に業者テストを行うことを禁止する通知を出す。テスト結果が中学校から私立高校に提供されることで、私立高校では入試前から偏差値の高い生徒の青田買いが行われ批判されていた。
  10)選択履修により普通教育と専門教育の両方を総合的に施す学科。
  11)文部科学省におかれる審議会で文部科学大臣の諮問に応じて識者が意見を述べる。
  12)習熟度別授業が象徴的。生活科を発展させる形で、変化の激しい時代を「生きる力」の育成を掲げた「総合的な学習の時間」が小中高校を通じて新設。完全学校週5日制。
  13)1996年の中央教育審議会答申の中で「ゆとり」とともに掲げられた重要なテーマ。「自ら学び、考え、主体的に判断する資質や能力であり、豊かな人間性」を指す。
  14)遠山敦子文部科学相が、宿題や教科書以上の内容の補修を奨励し、「ゆとり重視」から「学力向上」への方針転換を訴える。この都市の4月から新学習指導要領による学習内容の3割削減と学校週5日制の導入が決まっており、学力低下を懸念する声に配慮したため。
  15)
1999年に「分数ができない大学生」が発売され、大学生の理数系科目の学力低下が取り上げられた。2000年のPISAで日本は数学と科学では世界1位、2位だったが、読解力は8位。2003年では数学が6位、読解が14位となったことで論争が生じた。しかし、詰め込み教育の学力を測るTIMMSと、生きる力・考える力を測るPISAのコンセプトの違いを踏まえて議論すべきという意見もある。
  16)
OECD(経済協力開発機構)が世界各国の15歳の子どもを対象に実施する試験。読解力、数学的応用力などが測られ、2000年から3年ごとに実施される。それ以前はIEA(国際教育到達度評価学会)が実施する「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」が指標となっていた。IEAの順位は80年代まで日本がトップクラスにあったが、90年代末に8位に転落。PISA2006では更なる点数低下が問題となったが、TIMSS2007で下げ止まり、PISA2009で学力の上昇が示された。
  17)
4月24日に小学校6年生と中学3年生を対象に、国語、算数・数学の二教科で実施。1964年以来43年ぶり。62億円の税金が投入された。B問題はPISA型学力に対応したものと位置づけられる。
  18)
教育改革を政策の重要課題とする安部晋三首相により、2006年10月に設置。首相を含む3人の閣僚と17人の民間有識者で構成される。授業時間の10%増や教科書を厚くすることを打ち出した。この後、教員免許法、地方教育行政法、学校教育法の関連三法案が国会で可決された。
  19)
画一主義を改めないまま、すべての子どもに一律にゆとりを与えている。学習についていけない子どもは、詰め込みの進度ではなく、ゆとりを持った理解を重視する必要がある。一方で、もっと深く学んだり様々な学習方法に挑戦するために柔軟にカリキュラムを変える必要がある。
  20)
新しい学力観は「生きる力」という言葉で「強い個人」を想定しているが、学ぶ意欲はどの生徒にも生じるのだろうか。苅谷(2001,p.18)は学習意欲の格差について、誰もを勉強に駆り立てるプレッシャーを弱めることで、潜在化していた階層の影響が拡大したと言う。また、「だれでもがんばれば」と、努力の程度を個人の自由意志の問題とみなすことが階層の影響を見えにくくしたという(p.159)。苅谷の主張は、当時の小泉改革のもとで主張された自己責任論に対するアンチテーゼと位置づけられる。
  21)
櫻井(2005,p.18)は、ゆとり教育の理念は一部のエリートのみが実現できる教育という。
  22)
小学校で278時間、中学で105時間。小学校では47都道府県の名称や位置、台形の面積の公式、縄文時代、中学でイオンなどの内容が追加される。2011年から小学校で使われる教科書は25~43%ページ数が増えた。
  23)
ゆとり教育を支持する寺脇研は、大人全員が何かの役割を果たせているという状態を作り、その役割を果たすことで収入と満足感を得るという社会を理想としている。(寺脇2007 p.41)


テスト問題:ゆとり教育とはどのような教育であるか、どのような点が批判されているかを述べてください。その上で、自身の体験をもとに、ゆとり教育に関する自身の意見を述べてください。

回答例:ゆとり教育とは、詰め込み式の教育の批判から主として1992年度から施行された新学力観 に基づく教育を指す。その批判として、学習意欲格差が生じることや、基礎学力の定着がおろそかになるというものがある。(以下、自身の体験に基づく意見)

「ゆとり」で悪いか⁉ ワークシート

はじめに– 「ゆとり教育」について知っていることを書き出してみましょう。

次に
「ゆとり教育」の起源や起こった出来事のタイムラインに着目し、「ゆとり教育」について、2,3点でその特徴をまとめてください。


クラス討議:  「ゆとり教育」を肯定する意見 

行うこと:  「なぜ、今「ゆとり教育」なのか」(pp.29-34)の各セクションを読んでください.
グループでセクションごとに読んでください。
以下のスペースにポイントとなることを2,3書き出してください。
グループで討議し、このセクションのメインとなる考えを書き出してください
最後に、ゆとり学習が推奨された原因と効果をまとめてください。

Section 1  - 原点は70年代の「詰め込み教育」批判

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):


Section 2 – 新学習指導要領で学力は下がらない

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



Section 3 – 総合学習の教科書はない

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



Section 4 – 円周率3の誤解

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



クラス討議:  「ゆとり教育」を批判する意見 

行うこと:  「学力低下批判のポリティックス分析」(pp.97-105)の各セクションを読んでください.
グループでセクションごとに読んでください。
以下のスペースにポイントとなることを2,3書き出してください。
グループで討議し、このセクションのメインとなる考えを書き出してください
最後に、ゆとり学習が推奨された原因と効果をまとめてください。

Section 1  - 苅谷剛彦氏にみる学力低下批判としての教育政策批判

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



Section 2 – 不平等の拡大と学力低下

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



Section 3 – 学力低下批判のポリティックスの構図

キーポイント:
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このセクションのメインとなる考え(まとめ):



全体のまとめ:ゆとり教育について、なぜ「ゆとり教育」が必要とされたのかや、肯定意見や批判をまとめ、自分の体験を交え、自分の意見をまとめてみてください。

教育とカウンセリング

○カウンセリングが求められた背景
1980年代以降、いじめや登校拒否などの問題が深刻化していく中で、教育相談へのニーズが急速に高まった。多くの学校では保健室が居場所や相談室の機能を果たしていたが、生徒指導の一環として相談活動の充実が求められるようになっていった。

○カウンセリングマインドが求められた理由
子どもの状況の変化;人間関係を調整する能力を衰退させ、ストレス耐性の低下した。
成熟社会への移行に伴い価値観やニーズの多様化が進んだ。個性化と個別化が望まれる時代環境にマッチした。80年代以降に顕著となった学校の生徒指導がもつ強制性に対する教師の信念のゆらぎにも要因の一つ。

○カウンセリングの知や技法の特徴
比較的多くの教師たちに学ばれたのが、C.R.ロジャーズのクライエント中心療法
その特徴は、人間は誰もが自ら成長し自己実現をしようとする性向を本質的にもっており、心理臨床の技法はこのことへの徹底した信頼に基礎を置くべきだとしている点にある。
助言や指示の多かった従来のカウンセリングを改め、非指示的カウンセリングを提唱し、クライエントの「あるがまま」を受け入れ、共感に貫かれた態度で臨むことを極限まで強調した。
治療契約
非日常的な場
覚醒、葛藤の意識化
傾聴、支援、対話

○生徒指導へのカウンセリングマインドのもたらしたもの
先入観や理念的判断を一度脇に置き、対象の内的な意味世界を理解することを促した。
カウンセリングマインドに基づく受容と共感のアプローチは、子どもの行動という表層に現れた問題に対し、規範で裁くような態度を戒め、そうならざるを得なかったその子の内的な意味世界を肯定する受容的態度や、同伴者となろうとする支援的態度を取る教師により、より複雑化した共同体の中で生きる子どもを支援すると期待される。

○学校に心理臨床アプローチを根付かせる際の困難
評価権
日常/非日常
個人/集団

効果的な教え方、関心・やる気の引き出し方

○効果的な教え方 ※対集団ではなく、対個人を中心に
・効果的に教えることのポイントは、確認・質問(※警戒されることもある)・繰り返し
・情報を伝えるだけでは解決しない
・「知る」と「できる」は違う
・専門用語を使わない
・目で見てわかる資料・後で見てわかる資料
・実物を示す
・段階に分ける
・「何を言うか」よりは、「何を言わないか」
・相手が何を知っているかを理解する
・相手が知っていることを交えて話す
・相手が理解していることを確認しながら進める
・よく準備をし、シミュレーションをする
・相手が知りたいことや、質問したいことがないかを質問する
・大事なところは繰り返す
・最初に何を理解してほしいかを伝える
・途中で話の要点をまとめる
・最後に話したことを繰り返す
・伝えることを関連づけ、筋道を立てて話す

○関心・やる気の引き出し方
・外発的動機づけ:何らかの条件でしないといけない、強制・不安・恐れ・ストレス
・内発的動機づけ:自分で決めたことだから頑張る、認められたい・成長したいという欲求、価値あることだという認知、のめり込む心地よさ=情動、誰かのために=関係性
・関心:その人の教育環境と個人特性→体験を一緒に振り返る、共感する
・言って聞かせ、やって見せ、ほめてやらねば人は動かず
・関心を持っているタイミングを逸しない
・相手を参加させる
・待つ
・安易に手を出さない
・相手の状況や人間関係を知る
・相手に、自分の状況を話してもらう(話すという行為が相手のとっても問題点をクリアにする)

「ほめる」「しかる」ために大切なこと

埼玉県教育委員会HPよりhttp://www.pref.saitama.lg.jp/site/toukei/homekata.html

1 子ども理解
大切なことは、子どもを認めることです。子どもの心理的な発達の特徴を捉え、言動を正しく理解するとともに、子どもの立場や考えをしっかりと受けとめましょう。
2 子どもとの信頼関係
ほめる時もしかる時も根底にあるのは子どもと教師の信頼関係です。子どもに積極的に声をかけ、共感的な人間関係をはぐくみましょう。
3 社会性育成の視点 (略)
4 教員間の共通理解 (略)

ほめ方のポイント
・長所を見つけ、自信をつけさせるようにほめよう。
・言葉や態度に喜びをあらわして心を込めてほめよう。
・結果だけではなく、努力している姿やその過程をほめよう。
・「何をほめるか」を明確にし、具体的にほめよう。
・満足感や成就感を味わえるようにほめよう。
・子どもの発するサインを見逃すことなく、積極的にほめよう。
ほめることは存在を認めることです。子どもの話を興味・関心をもって受けとめ、積極的に関わっていくことが重要です。I (愛)メッセージを伝えてみませんか?子どもをほめるときに「あなたが頑張っている姿をみて、私(I)は、とてもうれしかったよ」というように、ほめる側の気持ちを伝えてみませんか?きっと子どもは元気がでるはずです。

しかり方のポイント
・人格を否定するのではなく、誤った行動をしかろう。
・しかり方に一貫性をもち、公平にしかろう。
・チャンスをとらえ、短く、本気でしかろう。
・感情的にしからずに子どもの心に訴えかけよう。
・他の子どもの言動と比較しながらしからないようにしよう。
・子どもを追いつめるようなしかり方はやめよう。
・以前のことを持ち出してしかるのをやめよう。
子どもの可能性を信じるからこそ、しかることができます。大切なことは、しかった後の見守りや見届けをすることです。

「可愛くば、二つしかって三つほめ、五つ教えて良き人にせよ」

バイオリン授業に対して誰が何を言うだろうか

○ニューヨークの教育
・セントラルパーク・イースト校の位置 
・「学校を変える力」紹介
1974年に、当時の肥大化した教育行政の問題解決のため、ニューヨーク市第四学区に開校。創設者デボラ・マイヤーが幼児教育の経験を活かし、教育学者ジョン・デューイらの思想に基づく民主主義を支える市民の育成や、レジュメ下に書かれている「思考の習慣」を身につけた自律的学習者を育成するための教育を行い、高校に進学した卒業生の9割以上が高卒資格を得る(市平均は半分程度)。アフリカ系やラテン系アメリカ人、低所得層が多い人口構成にも関わらず、1991年に開校したセントラルパーク・イースト中等教育学校は市内トップレベルの学力水準を達成し、退学者の減少、9割以上の卒業生が大学に進学したことで注目される。

・「36children」:ニューヨークの小学校教師が卒業後も子ども達と手紙をやりとり
大人になるにつれ厳しい現実。しかし、子どもたちに対して出来る限りをやる、と締めくくる。子ども達の「書く」という行為を通じて一人一人を理解していく姿勢は、日本における「綴り方教育」にも通じる点がある。1967年。

・「Savage Inequality」:貧しい学区にはお金がない。
アメリカ北部は学区(教会)中心に教育制度が発達し、学区が教育税。1991年に書かれた本だが、いまだに人種差別の残滓が見られることにも触れている。

・ロベルタ先生のビデオ
→スズキメソード。「母国語と同じように、どの子も才能を伸ばせる」
⇒教育における平等性とは?Q「どの子も努力すれば伸びる」は平等か?

○「ミュージック・オブ・ハート」に見る教育問題・社会問題
【教え方の対比】
・デニス教諭の授業はどこが違いましたか?
・長期在職権(テニュア)をもつデニス教諭の授業では、フルートを吹く子どもに対して、机でペンをたたきながら「D、D、D、C、C、C」と言う場面があった。
・「D」とか「C」は音階を示すが、アメリカでは「A、B、C、D、F」と成績を表す言葉でもある。カメラはデニス教諭が成績を記入しているところも写している。
・現在、ニューヨーク市の学校はすべて子どもの国語や算数の成績などを中心として「A、B、C」などの評価がされている。無機質な文字文化を批判している場面である。
・音楽に限らず、どのような教授方法をするかを学校全体で調整することは難しい問題。
・例えば、日本でも英語にしても会話中心にするか、文法中心にするかで議論が分かれる。

【障害を持つ生徒】
・障害を持つ生徒と一緒に授業を行うことについて、他の生徒の保護者はどのような意見を持つでしょうか?
・足に障害を持つグアダルペという少女。いつもはやんちゃなデショーンが優しく椅子を持ってくる。ハンディキャップを抱えた子どもを教室の中に迎えることで、クラスがまとまることもある。
・障害にもさまざまある。目、耳、口、知的障害。アメリカでは2004年に「障害のある個人教育法:IDEA」が定められ、特別支援を受けながら通常クラスで学ぶことが推奨され、インクルージョン教育という領域で研究されている。しかし、テスト主義の浸透に伴う問題や、安易な診断により学習方法・教授方法の改善につながらない、などの問題もある。

【学校における正統文化】
・なぜ、黒人のナイームの母親が、「退屈な白人音楽なんか習うより」「黒人のクラシックの作曲家を何人ごぞんじ?」というロベルタ先生に食って掛かったのでしょうか?
・これは、学校が白人中心の文化であることへの批判である。
・60年代は黒人コミュニティを中心とした闘争があった。セントラルパーク・イースト校の創設者デボラ・マイヤーが書いた「学校を変える力」でも、74年の創設時にこうしたコミュニティを中心とする教育の要望との葛藤があったことが書かれてある。

【ニューヨークの治安、環境】
・ロベルタ先生がデショーンに「どれくらい練習した?」と聞くが、「喘息(asthma)がひどかった」と答える。喘息を生じる環境要因は、喫煙や住環境の悪さ、貧困が関係している(※)。妊娠時の麻薬や住環境の悪さが胎児に影響を与えることも問題とされている。
※藤原武男,大澤万伊子「喘息の環境要因」(独)国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部
・ルーシーのおばあちゃんが泥棒に殺されたと言う話があった。ニューヨークの治安は9.11以降良化しているようだが、地域によっては気を付けなければならない。学校選択制度が支持される背景には、社会経済的背景による階層化や個性を重視する文化や宗教的価値観の強さに加え、安全の確保を願う親心も影響している。学校選択制が同質性を高めるのか多様性を広げるのかは、こうしたアメリカの文脈を加味して考察する必要がある。例えば、移民が大多数を占める地域において、果たして日本のような「地域社会」が存在するのか、それとも学校がそのコミュニティの拠点となるのか、という問いが必要である。
・シングルマザーであり、アメリカでは教師は社会的経済的低く、給料は10か月分しかもらえない。しかも非常勤講師のロベルタ先生は、住環境が良くない地域に住まなければ生活できなかったのかもしれない。仕事と子育ての両立に苦しむロベルタ先生の問題は、今日の日本においても同じく生じるシングルマザーの問題でもある。

【保護者との関係】
・あなたが保護者だったら、ロベルタ先生の授業に不満を漏らす子どもの声を聞いて、どのように対応しますか?
・ベッキーの母親が「あなたはいつも生徒を怒鳴っている」と教育方法に口出しをする。
・教師は教育の専門家であるが、その教育は保護者との協力なしには成立しない。保護者の参画と教師の専門性がうまくバランスするときに良い教育が生じるが、そのためにはどちらも相手を理解する努力を継続する必要がある。その対話や協同の機会を設け、うまく運用することが必要である。

「青い目、茶色い目」
・レッテルを貼ることで差別が生まれる
・差別された側は「学校教育」に対するやる気を失う。
・差別された側は「学校教育」に馴染んでいる子どもに対する不満を募らせる。
・教師の声掛け一つで、子どもの価値観が変わる。
・教師に目をかけられた子どもは学習に対するやる気をだし、実際に点数が上がる
⇒教師が身体化している価値観との相性で学校生活が変わる。教師という職業に就く人にはある程度共通した要素がある?(中産階級、大学卒、白人、女性、、、)
Q「自分と相性の合った先生、合わなかった先生について」

「移民と英語」
・今からスペイン語で授業をする、と言われたらどう思うか。
・セントラルパーク・イースト小学校(208名、2012年度)は白人25.5%、黒人28.8%、ヒスパニック33.2%。文化、母国語が多様。
・白人、英語、書き言葉を正統とする学校文化との不適合や葛藤が生じる。
・話せるけど書けない。日常生活に困らない程度=小学4年生くらい。会話中心でいい?
・私の英語学習法
Q「ミュージック・オブ・ハート」におけるバイオリン授業についての意見を次の立場から
ロベルタ先生、そのクラスの担任、他の音楽教師、校長、教育委員会、他校の校長や先生、
ロベルタ先生の授業を受けている子ども及び親、受けていない子ども及び親、白人の子ども及び親、黒人の子ども及び親、ヒスパニックの子ども及び親、ロベルタ先生の家族