学校の組織風土と組織文化に関する研究動向レビュー
露口健司
教育経営 教育行政学研究紀要、1996、第3号、91-98
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/820/1/KJ00000685487.pdf
アメリカの効果的学校研究、日米の学校改善研究の領域において、組織の文化や風土などのインフォーマルな要因によって学校の組織的効果性が規定されるとの認識が高まってきた。そうした学校の文化を校長のリーダーシップによってどのように形成、変容させるのかを明らかにする。
ここでは、20本の論文を対象としたのであるが、それらを便宜上、
1. 学校改善(革新)への組織風土の影響に焦点をあてたものとして「学校経営組織の革新」
2. 教師の力量形成への組織文化、組織風土の影響に焦点をあてたものとして「研修と教師の力量形成」
3. 狭義の組織文化とリーダーシップとの関係に焦点を当てたものとして「指導者のリーダーシップ」
4. さらにフォロワーとしての教員の文化に焦点をあてたものとして「教員文化」の4項目に分類することとした。
なお、学校の組織風土と組織文化の概念は理論的には明確に区別できるものの、意識調査という実証的なレベルにおいては区別しにくいものであるということができよう。また、両概念の関係としては、「組織文化が組織風土を方向付けている」と、とらえることがかのうであるように思われる。
1.学校経営組織の革新
主に挙げられたのは、林孝の1980年代の広島大学や中国四国教育学会の紀要である。具体的には、オープン・システム論の導入によって(1)組織と個人の調和、(2)専門職としての教師集団、(3)変革の概念を志向し、「自己革新的組織に基づく学校の経営組織論」を確立することを目標とした研究であるといえる。OD(Organization Development)概念について、その学校組織研究への導入の有用性と課題について検討し、組織風土測定の意義を考察し、HalpinとCroftの組織風土モデルを一例として検討を加えている。また、教師の意欲を「教育意欲+研修意欲」と仮定した上で、「教師の意欲」喚起の方策についてHerzbergの動機付け・衛星理論の視点から論及した。教職員集団の共通理解と協働意思による一貫した指導体制確立の必要性を打ち出し、こうした必要に答えるものとして、組織風土研究を位置づけた。組織風土に4つの次元(共感、成長感、満足感、解放感)見出し、これに組織過程変数(リーダーシップ、意思決定、コミュニケーション、協働体制など)による規定因に差異があるとし、各次元2カテゴリー(+か-)によって、組織風土の16類型を作り出した。このように「ある姿」を踏まえたうえで、自己更新の目標となる「ありうる姿」への接近を模索しつつ、分析考察を試みた。具体的に言うと、「ありうる姿」を学校の経営組織が追求すべき成果(「児童・生徒の健全な成長」、「動機付けや意欲の喚起された状態」、「協働を可能にするための場の確保」)としてとらえ、こうした経営組織の成果変数(「あるべき姿」)と教師の認知する組織風土の次元との関連について検討を加えたものである。また、HalpinとCroftの開発したOCDQ(Organizational Climate Description Questionnaire)の測定用具をわが国の小学校に適用した。知見としては、組織風土の因子構成はオリジナルな研究結果に近いものとなったこと、クローズドな風土をもつ学校よりもオープンな風土をもつ学校の方が学校の革新性が高いこと、小規模校の方が大規模校よりも組織風土のオープネス度が高いこと、年齢や地位・職歴が高まる(長くなる)ほど組織風土のオープネス度を高く知覚する傾向があったこと、女性よりも男性の方が組織風土のオープネス度を高く知覚する傾向があったことが挙げられている。
2.研修と教師の力量形成
3.指導者のリーダーシップ
中留武昭「学校文化を形成する校長のリーダーシップに冠する研究(その2)」(1995 九州大学)では、学校規模、学校種別、公私立、地域別に異なった5つのケース(ハイスクール3校、初等学校1校、私立学校1校)事例分析を通して、文化形成のプロセスを描きだすとともに、(1)学校は何であるべきか-その歴史、価値そして信念をベースにおいた学校観(規範)を開発していること、(2)その学校観に最適の教職員を採用(選考)していること、(3)校内の対立をさけるよりもむしろ対立を通して争点を解決し、それを統一化しようとしていること、(4)コアとなる価値や信念をモデル化して、そうした価値を日常の仕事の中において一貫し、継続して強調しようとしていること、(5)共通化された価値を説明すべき講話(物語)をもって語りかけること、(6)学校文化を表現し、強調しようとする差異にとっている伝統作り、儀式、儀礼化などを積極的に図っていること、などが抽出されている。
4.教員文化
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/820/1/KJ00000685487.pdf
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