学校改善と学校の個別性についての調査
蔵田幸三
東京大学大学院教育学研究科教育行政研究室紀要 第17号
はじめに
「学校組織風土」とは、個別学校の教職員が共有している行動様式や学校に漂う雰囲気のことを指している。我々は、学校がそれぞれに持つ雰囲気や風土はどのようなものとして理解することができるのか、また、それらがどのような要因により生み出されるのかということを調査することした。
調査手続き、回収率
T県、I県の全公立中学校904校の校長を対象とした。有効回答率48.1%。調査期間は1997年8月1日から8月31日。調査方法は郵送法で書く中学校に質問票を配布し、同封の返信封筒によって返送する方式を用いた。
質問内容の構成
学校及び校長の属性
学校組織風土 25項目 5段階
校長のリーダーシップ特性 28項目 5段階
教育目標・校長の共振行動
教育計画書を保護者に対して公開しているか
教育経営案を公開しているか
教育目標や計画に関して 4項目 4段階
重点目標を決める際の参考 11項目 4段階
決定に際し誰の意見を参考にしたか 14項目 4段階
父母・地域の特性 8項目の中から最も近い物を一つ
地域と学校の関わり
地域と学校との関わりについての校長の期待・信念
生徒の現状と教師が持つ生徒指導観
単純集計と質問群の因子分析
学校組織風土に関して抽出された因子「親和性」「他律性」「調和性」「民主性」「多忙性」
校長のリーダーシップ特性に関して抽出された因子
「権威依存」「強力」「合意重視」「他者比較」「合理的」「校長優位」
父母・地域の特性に関して抽出された因子 「伝統重視」「低階層」「文化性」「過疎」
地域と学校の関わりに関して抽出された因子
「学校評判」「学校・地域連携」「教育熱心」「地域活発」
教師が持つ生徒指導観に関して抽出された因子
「指導の共通性」「指導の個別性」「教師理念先行」「自律性尊重」
因子間の相関分析
「学校組織風土」と「校長のリーダーシップ特性」は深く関係を有していると考えられる。「学校組織風土」と「父母・地域の特性」はそれほど強い関係を持っていない。それよりも「学校組織風土」と「地域と学校との関わり」とのほうが関係が強い。また、「学校組織風土」と「教師が持つ生徒指導官」は深く関係している。
今回用いた因子分析の方法は、各質問群に関係する質問項目全てについて、主体角要素に全て主成分分析を施して因子を抽出した後、バリマックス回転を行い、固有値1条の複数の因子を抽出した。その析出された因子に含まれる質問項目の中で、「.500」以上の因子負荷量を示した項目を、因子負荷量が大きい順に並び替え、各因子について解釈を行った。
因子間の相関を検討するに当たっては、核質問群において析出された因子について、各因子ごとに合成変数を作成し、それぞれに対応する相関係数を求めた。
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