学校改善を規定する学校文化の要因に関する調査
-校長に対する意識調査の結果から-
代表 中留武昭
教育経営 教育行政学研究紀要、1996、第3号、39-84
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/824/1/KJ00000685495.pdf
はじめに
この研究は、最終的には学校改善を促進するべく日・米の校長のリーダーシップスタイルの類型化を行うことを通して、日本固有の文化的リーダーシップのスタイルを学校改善に向けて新たに仮説し、このスタイルと他のスタイルとの関連性及びこのスタイルの解釈とこれを形成していくための実践的な戦略とを解明することにある。
本調査は、校長のリーダー行動が学校改善にいかに機能していくかを校長の意識を通して解明する。一方で、本調査には限界点がある。この調査がその相手側を直接回答の対象者にしていない点と、いまひとつは単位学校をトータルなターゲットとしていない点にある。しかしながら、本調査は母集団を一定の市地区の義務制の校長に絞ったことにおいて、同市の校長による学校文化に関する一般的、全体的な認識傾向を知る上では一定の意味を持つものである。なお、引き続き、大阪府負荷の義務制の学校を中心に単位学校における校長及び教員を対象とした同じ設問項目による調査も行っている。さらに平成8年度においてはフィールドワークによるケーススタディ調査も予定している。
調査の基本的視座と分析の枠組み
ここでは、まず次のような定義をしている。「学校改善とは各学校が子どもの行動変容を目指した教育実践の質をよりよく図るために、学内外の諸条件を開かれた協働によって組織化していく活動である」とする。この定義と関わった学校改善の構成内容上の特色としては、①学校改善の対象は制度としての学校教育一般ではなく、各学校としての単位学校における計画的、組織的な改善である。②改善の最終目標は子どもの行動変容にある。③改善の中心領域は学校経営の中心でもある教育課程経営にある。④改善の戦略は学内外における「開かれた協働」である。
学校改善のアプローチは他にも①人的資源アプローチ②構造的アプローチ③政治的アプローチ④自由市場的アプローチなどを提示する研究者もいるように、学校文化的アプローチのみが改善のための万能薬というわけではない。しかしながら、アメリカにおける最近の学校改善研究の多くは学校改善を促進するキーパーソンとして、「学校指導者」としての校長のリーダーシップの力量を実証的に明らかにしてきている。
つぎに学校改善を規定する学校文化については、「各学校に固有のものとして形成されている規範、慣習、価値、信念や行動様式などの認識枠組み」を意味している。そしてこのような学校文化には顕在化した文化と目に見えにくいが潜在化した文化とがある。
また、学校改善のための学校文化の構成領域としては、教育課程文化(わが校の教育課題ということも可能)、児童・生徒文化(学級文化が中心)、教員の文化とこれら3つのミクロ文化を支える組織文化(この場合、組織文化は狭義の学校文化と言い換えても良い)とから成り立っているものと考えられる。
調査の概略と対象者の属性
調査票はA表とB表の二部構成からなり、A表は大きく校長による学校改善の現状認識と校長のリーダー行動の主たる領域の部分と校長のリーダー行動の特性及びリーダー行動の阻害要因からなっている。また、B表はいずれも学校文化に関する項目で、これは4つの上記のミクロ文化のグループから構成されています。このとき、設問の記述表現としては消極的文化の内容表現にした。これは、表現内容を積極的文化の内容とした場合、回答が安易に流れやすくなるのを防ぐためであった。これらのミクロ文化の各項目を見たとき、大きく①協働性、②自律性、③実験性に類型化できよう。
調査結果の分析
教育課題の現状把握(千々布敏弥、大野裕己)
校長のリーダー行動の特性と学校文化(元兼正浩)
校長が文化的リーダーシップを発揮するためには、その前提として同一校での勤務年数の長期化を測っていく必要がある。
学校文化の構成要因の分析(中留武昭、露口健司)
協働性とは、学校内での同僚関係を中心として、参加、意思決定、信頼と支援体制、情報へのアクセスなどを含んだ概念である。自律性とは、教職員の自律性や専門性、さらにはその背景にある責任性までを含めた概念である。実験性とは、革新性を初め、計画-実施-評価のサイクルなどによって仕事を追行していく技術過程までを含んだ概念である。
全体的にいえることは、どのリーダーシップスタイルをとっても、組織文化以外の他の3つのミクロ文化においては大きな違いは見られない。
協働性の形成には教育的リーダーシップと文化的リーダーシップとの2つが相補関係として関連し合っているものと思惟される。
要約と結論
文化的リーダーシップは、教師が指導方法を変えようとしない文化や事務処理での多忙な文化、また旧態然とした集団の枠組みを維持している学級文化といったようないずれも変革する実験的文化とも関わっている。
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/824/1/KJ00000685495.pdf
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